豪と日本の教育の違い

オーストラリアの教育システム


「子どもと一緒に留学してみたいけど、現地の教育ってどんな感じ?」

そんなふうに気になっている方も多いのではないでしょうか。オーストラリアと日本では、学校のスケジュールや進路、大学進学のしくみに意外と違いがあるんです。
今回は、そうした教育の違いをご紹介します。

  1. 小中高一貫の教育システム
  2. 4学期、2セメスター制
  3. 学習内容
  4. 授業スタイル
  5. 科目選択と進路の仕組み
  6. 自分の教室や机はない
  7. 休み時間
  8. 大学進学

1. 小中高一貫の教育システム

オーストラリアでは、公立か私立かに関係なく、小・中・高一貫のスクールが一般的です。
幼稚園がついている学校もあります。小学1年生をYear1と呼び、そこから順に年を重ねていきます。つまり、中学1年生はYear 7、高校一年生はYear10、高校3年生がYear12と呼ばれます。

赤点や問題行動がなければ進学できるので、基本的に受験もありません。

2. 4学期、2セメスター制

オーストラリアの学校では、学期のことを Term(ターム) と呼びます。1年は4つのタームに分かれていて、1Termはだいたい9~10週間です。
さらに、成績表はTerm1と2の結果を合わせてSemester1(セメスター・ワン)、Term3、4でSemester2と区切って出す場合もあります。
新学期は1月末から始まり、学校ごとにスケジュールは多少異なりますが、だいたい下記の通りです。

Term1 1月最後の週~4月最初の週
2~3週間のスクールホリデー
Term2 4月下旬~6月下旬
2~3週間のスクールホリデー
Term3 7月中旬~9月下旬
2~3週間のスクールホリデー
Term4 10月上旬~12月上旬
次の新学期まで長いスクールホリデー

3. 学習内容

それぞれのTermごとに特定のテーマを学びます。そして、そのテーマに沿って 課題(Assignment) の提出やテストが行われます。
このAssignmentの形式は本当にさまざまで、たとえばこのようなものがあります。

  • あるテーマについて自分の考えを論理的にまとめるエッセイ
  • 調査や実験の結果をまとめて分析するレポート
  • グループまたは個人でのプレゼンテーション
  • 学習の成果をまとめたポートフォリオ(作品集)など

こうしたAssignmentを通し、子どもたちは 情報収集、分析、自分の考えを学術的な方法でまとめる力を育てていきます。
実際の例を挙げると、、、

Year7(中学1年生相当) のサイエンスの授業で学んだテーマ
「どうやって飲める水を作るか?」
授業では、ろ過や蒸留の仕組みを学んだり、飲料水を確保するのが難しい地域で使われている水生成装置についても調べていました。そしてAssignmentでは、自分で飲料水を作る装置を設計し、それについてのレポートを書くという実践的な課題が出されました。

Year12(高校3年生相当)の数学で「カーブの計算」の学習に合わせたテーマ
「ウォータースライダーの設計」
Termの始めには、クラスみんなでウォータースライダーがある遊園地へ“調査”(という名のほぼ遠足…)に出かけて、実際の滑り具合や角度、スピードなどを体感。その後、実際の数式やデータを使って設計に挑戦しました。

このように、オーストラリアの教育では「学び」が生活に密着していて、子どもたちが「これって将来どこで使うの?」じゃなくて、今まさに使ってる! という実感を持てるようになっているのが特徴です。楽しみながらも、しっかりと考える力を育てる仕組みだなと感じます。
そして、日本と比べると、圧倒的に暗記や反復練習が少ない。もう少しやっても良いのでは?とも思いますが、確かに調べてわかることは暗記する必要はない。コンピューターで計算できることを頭で考える必要はない。オーストラリアでは、調べ方や、調べた内容をもとにして自身の意見や解決策を組み立てる能力を育むことが重視されています。

ちなみに、各Term終了後のスクールホリデー中、宿題が出ることはありません。




4. 授業スタイル

最近は、日本の授業も生徒の自主性を求める授業が行われていると聞きますが、先生が教科書をもとに進める講義形式が未だに多いのではないでしょうか。
オーストラリアでは、先生はガイド役のような感じ。
テーマと基礎的な情報を提示し、その後は生徒が自ら探求し、意見をまとめ、課題(Assignment)として提出できるように支援するだけです。支援といっても、「質問があったらいつでも言ってね」というスタイルなので、生徒自身が積極的に質問をしにいかないと、先生の方から様子を見て助けてくれるという事は期待できません。遠慮せずどんどん質問した方が良いです。
ITの導入もかなり進んでいます。2020年にYear7からゴールドコーストの学校に入学しましたが、早速学校指定のノートPCをリースされました。
学校によりますが、小学校のうちから各生徒が自分のノートPCを持ち、授業では紙の教科書ではなく、オンラインで教材や課題の提供が行われる学校が多いです。年度の初めに紙の教科書も貸与されますが、息子の学校ではほとんど開くことはないです。課題の提出、フィードバック、成績の確認も全てオンラインで完結

ちなみに、保護者も学校のポータルやe-mailを通して子どもの成績、学校から連絡事項を確認します。私は息子の学校から紙での連絡をもらったことがありません。

5. 科目選択と進路の仕組み

オーストラリアの学校では、Year10(高校1年)になると、履修できる科目の選択肢がぐんと広がります。
それまで学んでいた「国語・数学・理科・社会」などの基本科目は、より細かく専門分野に分かれていきます。たとえば理科なら、物理・化学・生物 に分かれ、それぞれを個別に選択して学べるようになります。
さらに、基本科目以外にも選べる科目が増え、まるで大学のようなラインナップになります。
たとえば、

  • ビジネス
  • 会計
  • 法律
  • 心理学
  • 外国語
  • ホスピタリティ
  • エンジニアリング
  • デジタルテクノロジー
  • アートや音楽 

などなど。

医療系を目指す学生は、外部の医療系専門学校で単位を取るといった選択肢まであります。 もし将来、大学で学びたい分野がある場合は、それに関連する科目を選んでおくのが基本。たとえばエンジニア系に進みたいなら、数学や物理、エンジニアリングなどが有利になります。
逆に、大学進学はせずに専門職を目指す場合は、外部の専門学校と連携して、直接その分野の知識を学び始めることもできます。
高校生のうちから、専門的な知識を学べる環境が整っているのが本当に驚きです。生徒が将来の進路を見据えて科目を選び、実用的な学び方カスタマイズできるのです。将来使わないだろう知識の詰め込みに時間を使うより、かなり合理的だなという印象を受けました。

正直なところ、日本で「文系 or 理系」くらいの選択しか経験してこなかった私にとっては、「え?何を選べばいいの?」と、最初はかなり戸惑いました。
でも学校には、進路指導の専門カウンセラーがいて、安心して相談できる環境が整っています。また、「キャリアフォーラム」や、「職業体験(Work Experience)」の機会も用意されていて、子ども自身が自分の興味や適性を探りながら選べるようになっています。
こうして少しずつ、自分で考えて「これを学びたい」「このスキルを身につけたい」と選択していく力が育っていくんですね。もちろん、後になって科目を変更することは可能です。親としては、あれこれ口を出すよりも、子どもが考えたり迷ったりする過程を見守ってサポートするのが大切だなと感じています。

6. 自分の教室や机はない

オーストラリアの学校では、授業ごとにその教科の教室へ移動するスタイルが一般的です。決まった教室や座席はありません。私物は自分専用のロッカーにしまいます。

Year10になると、それぞれの進路によって選択教科がかなり異なるので、教科ごとにクラスのメンバーが変わります。実験や調査などをグルーブで行うことも多いので、それぞれのクラスで助け合える友達がいると心強いですね。


7. 休み時間

オーストラリアの学校では、日本のような、授業ごとの5~10分休憩はあまりありません。トイレに行きたくなったら、先生に許可をとって授業中に行くことができます。
短い休み時間の代わりに、午前中の途中には「モーニングティー」と呼ばれる少し長めの休み時間があります。生徒は軽食を食べたり、外で遊んだりして過ごします。
なので、ランチ(お弁当)とは別にフルーツやスナック菓子などの軽食を持ってくる生徒が多いです。

参考までに、息子の学校のタイムスケジュールを紹介します。
全ての学校がこのスケジュールではないのであくまで一例として。
息子の学校は“40分単位”で区切られていて、以下のようになっています。

  • 8:20~ 1時間目 全校集会、レクレーション、セレモニー等
  • 9:00~ 2時間目 授業
  • 9:40~ 3時間目 授業
  • 10:20~ モーニングティー(40分間の休み時間)
  • 11:00~ 4時間目 授業
  • 11:40~ 5時間目 授業
  • 12:20~ 6時間目 授業
  • 13:00~ ランチ(40分間の休み時間)
  • 13:40~ 7時間目 授業
  • 14:20~ 8時間目 授業
  • 15:00  下校

2・3時間目が数学、4・5時間目が化学…等、2コマ連続して同じ授業が行われることも多いようです。

8. 大学進学

オーストラリアの高校からオーストラリアの大学に進学するには、ATAR(Australian Tertiary Admission Rank)のスコアが重要になります。
これは、特定の試験の点数ではなく、全国の生徒と比較して自分の成績がどの位置にあるかを示す指標です。ATARは 最高99.95 が満点(100ではないのがポイント)で、0.05刻みでスコアがつけられます。
ATAR 99.95 を取得できるのは、上位0.05%の学生だけ。年によって異なりますが、だいたい2000人に1人くらいの割合みたいです。
ATAR 90以上は 上位10%
ATAR 80以上は 上位20%
…といったように、数字がそのまま「上位〇%」を示しています。

そして、例えばThe University of Queensland(クイーンズランド大学)のBachelor of Laws(法学部)の2025年のしきい値(最低ライン)は“ATAR 97.5”となっているので、2025年は97.5以上をとった学生が入学しているという事になります。
同じ大学でも、学部や学科によってATARのしきい値は変わります。人気のある学部(医学、法学、エンジニアリングなど)では、ATARが高い傾向にあります。

【 算出方法 】

  • ATARにむけての勉強は“Year10 のTerm4”からスタートします。そして、ATERのスコアは、『“Year11のTerm4”~“Year12 のTerm2”までの3Term分の学校の成績』と、『“Year12のTerm4”に行われるExternal test(州ごとの統一試験)の結果』で算出されます。
  • 履修した科目のうち、成績が良かった上位5科目の結果がATARに反映されます。
  • 一般的に英語系科目の一つは必須です。大学の学部によっては、数学系科目を求めるところもあるので、希望学部の指定する科目は必ず履修して良い結果を出せるように頑張りましょう。どの科目を履修していなければならないかは、各大学サイトの学部紹介のページに記載されています。
  • 一部の難易度の高い科目はスコア補正(加重)があります。例えば、Specialist Math やMath Methodsは数学系科目の中でも高スケーリングです。さらに、Physics(物理)、Chemistry(化学)も高スケーリング科目です。嬉しいことに、日本語も、こちらでは難易度の高い外国語とされているので、高スケーリングになります。ただし、難易度の高い教科ばかりで良い成績がとれなかったら意味がないので、子供の希望学部と実力に合わせて科目選択を考えましょう。

ATAR以外にも進学する方法はあります。ATAR以外の方法を考える必要がある場合は、進路指導のスタッフや留学エージェントに相談しましょう。

日本の学校とは違うことがたくさんあるので、最初のうちはお子さんも戸惑うことがあるかもしれません。特に英語にまだ自信がないと、「わからない」と言い出しにくくて、質問できずに困ってしまう子もいます。
でも、わからないことをそのままにしてしまうと、課題の提出方法や締切を間違えてしまって、思わぬ形で成績に響いてしまうことも。そんなときは一人で悩まず、学校の留学生担当の先生やエージェントに相談してみてくださいね。
息子の学校では、先生が丁寧にサポートしてくれるのはもちろん、必要に応じて日本人の先輩を紹介してくれたり、「バディ」と呼ばれるお世話係の子をつけてくれたりと、サポート体制がしっかりしています。

最初は戸惑うこともありますが、Termごとに少しずつ仕組みに慣れて、自分で動けるようになっていくので大丈夫。
親子で一歩ずつ、ゆっくり慣れていけたらいいですね。